変化への挑戦 ~新たな価値で未来を掴む~

理事長所信

澤田 光成

【はじめに】

我々が住んでいるまち函館は、日本最初の貿易港の一つとして、いち早く世界に開かれ、諸外国の文化を柔軟に取り入れるとともに、水産業や造船業を主要産業として発展を遂げてきました。近年は、その歴史と異国情緒あふれるモダンな街並み、四季を通して様々な表情を見せる雄大な自然、豊かな海と爽やかな気候に恵まれた多彩な食など、豊富な観光資源をふんだんに活かし、毎年観光客が大勢訪れる国際観光都市として賑わいを見せてきました。しかし、時代の流れに伴う人口減少や少子高齢化など、色々な問題も生じているのが現状です。そして、近年は新型コロナウィルス感染症のパンデミックが人々に脅威を与え、社会的・経済的に甚大な影響を及ぼしました。我々が住んでいるまちも例外でなく影響を受け、観光に携わる様々な産業や、その他の基幹産業が甚大な被害に遭い、先行きが見えない状況が続きました。大規模な感染症による社会の急激な変化は、私たちの住んでいる世界が予測不可能であることを目の当たりにさせました。しかし、世の中はもともと予測不可能なものであり、時代の変化に常に対応していかなければなりません。変化を恐れ停滞してしまえば、それは後退につながります。時代の要求に常に対応し前進し続けることが重要です。人は対応できているのか、組織は対応できているのか、社会は対応できているのか。今だから変わるのではなく、常に変化し続ける覚悟を持って前に進んでいく必要があります。今までの価値観にとらわれることなく、時代に即した行動を展開して、我々に求められているのは何かを、この時代にこの場所に集まった同志とともに一年間考え続け、能動的に行動してまいります。

【持続可能な組織へ】

青年会議所という組織は、明るい豊かな社会の実現という共通目的を持った若者が自発的な貢献意欲のもと、お互いの意思疎通を積極的に図って活動を行っている組織であるということを忘れてはいけません。そして、青年会議所の本質は会議活動であり、会議を通じて様々な議論を交わすことで強い運動に成り、それが地域の未来のためにつながります。まずは、徹底して会議の質を追求することが持続可能な組織運営の第一歩と考えます。そして、世の中の情勢が目まぐるしく変化する中、組織においても時代に見合った運営や活動の方法を積極的に取り入れていく必要があります。WEB会議やWEB例会はその最たる例といえますが、この経験を通じて感じたのは、オンラインでもメリットを感じた一方でデメリットがあるということです。ただ一つ確かなことはこれまでになかった新しい組織運営の手法を手にすることができたということです。組織運営で大事なことは、小さなことから見直すことだと思いますので、今まで築き上げてきたことでも変える必要があるのなら、一つずつ変えていき、その積み重ねをすることにより、時代に見合った組織を展開していきます。

そして、組織は一人ひとりではできないことを実現する大きな力を生み出す存在です。その中で互いに感謝し高め合うような環境があってこそ、よい関係性が生まれ、共に尊重し、共に学び合い、共に成長していけると考えます。その結果、物的な豊かさだけではない、心理的な充実感や自分を前向きに動かしてくれる使命感を見出すことができます。今こそ、函館青年会議所をメンバーの心を充実させる存在として大切な役割を担っていくように進化させ、時代に見合った持続可能な組織運営をしていきます。

【戦略的な広報発信を】

函館青年会議所は創立72年を迎えましたが、どれだけの地域の人々に運動を伝播してきたのでしょう。どのような団体として地域の人々に認知されているのでしょう。どんなに素晴らしい活動や事業を行っても、それが伝わらないことには地域を巻き込み、大きな運動につなげていくことはできません。明るい豊かな社会の実現に向けて活動していくためには、我々の活動を広く地域に伝え、その効果が波及していくような発信が重要となります。近年は情報技術の急速な発展に伴い、組織のブランディング手法にも様々な選択肢が生まれています。単に前例を踏襲した形で機械的に広報するのではなく、発信する側としてどのような形で我々の届けたい層に有益な情報が伝わるのか、これまで我々の存在や我々の行っている事業を知らなった方々に届けることができるのかを今一度考える必要があります。PDCAサイクルを見つめ直し、今の時代に見合ったSNS等のデジタルマーケティングと融合させた新たな広報戦略を確立させた情報を発信することで、地域の賛同者を増やし、大きな波及効果を生み出す運動を展開することができます。

又、他LOMとの交流を積極的に行い、青年会議所のスケールメリットをメンバーに体感してもらい、そこで得られる多くの知識や経験、情報を組織内外に発信することにより、自己成長や組織力向上につなげ、揺るぎない運動を生み出していきます。

【地域の未来を描く】

函館は北海道南西部の渡島南東部に位置し、天然の良港である函館港によって北海道と本州を結ぶ交通結節点、道南地域の中心として発展してきました。近年では北海道新幹線開業、函館空港民営化、函館新外環状道路開通などの交通インフラが整備され、受け入れ態勢が拡充されてきた結果、2019年の観光入込客数は536万9000人を数え、ブランド総合研究所が2006年から毎年発表している地域ブランド調査ランキングでは、計6回も第一位を獲得するなど順調な歩みを進めてきました。2022年には若松ふ頭旅客ターミナルが開業し大型クルーズ船の受け入れ体制が整う予定なので、益々、観光客などの交流人口の増加や物流機能の充実化が予想されます。その反面、コロナ禍によって露呈された観光産業に頼ったまちの弱さも浮き彫りになったのは記憶に新しいできごとです。今こそ、陸・海・空の交通網が充実していることを活かした観光業以外の交流人口の拡大などの新しい取り組みを視野に入れる時ではないかと思います。函館には沢山のまちの強みがあり、それに加え、第四次産業革命、地方創生への潮流など、様々な世の中の外部要因を掛け合わせることで、観光業だけではない持続可能なまちの実現が可能になります。

そして、行政と歩調を合わせ今後のまちの発展の構想を共有し地域課題の共通点や協働による事業効果を検討し、協力体制をより堅固に結ぶことにより、より良いまちづくり運動を展開していきます。

【子供たちの未来のために】

地域の未来を担っていくのは子供たちであり、それを支えていくのは私たち大人です。そして多くの青年会議所のメンバーも次代を担う子供たちの親であり、子供たちを正しい方向へ導く責任と義務があります。昨今の子供を取り巻く環境は、時代の変化に伴い私たちの幼少期に比べて劇的に変化しています。インターネット社会の加速的発展などで便利な世の中になった反面、昔はできた経験が今では中々できないことが沢山あったり、情報社会や核家族化、地域コミュニティーの希薄化などにより、利他的行動や自制心、規範意識や人間関係を形成するコミュニケーション能力、判断力などが不足してきていると感じます。それに拍車をかけ、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響により、今まで当り前に行われていた対面でのコミュニケーションが行えなくなり、子供たちの社会性を育む機会が少なくなっているのが現状です。今こそ、地域の未来を担う子供たちに私たちが学んだ経験を活かし、普段の生活環境では体験できないことを実際にさせてあげる機会を与える事が重要です。その経験を通し子供たちには新たな気づきを得てもらい、人と人との交流やつながりから得られる思いやりの心や、自尊心、コミュニケーション能力の向上など、様々な豊かな心を育成できる機会を与え、成長を促がします。

又、子供たちの成長を支える基盤となるのは私たち大人です。様々な社会環境の変化を論じる前に、大人たちが率先して模範となるような姿勢を見せる必要があります。子供と大人が一緒に成長することで、社会環境も必然的に変化していくと考えます。

【永続的な会員拡大】

近年、全国的に会員拡大は厳しい状況に置かれており、函館青年会議所においても全盛期には200人を超える会員で活気に満ち溢れていましたが、現在は60名を切る会員数になっており、会員拡大が思うとおりに実行できていない現実があります。そして、青年会議所という組織は単年度制で毎年役職や担いが変わるという特徴を有していますが、設立以来、唯一途切れることなく継続している事業は会員拡大という事業です。青年会議所の使命は「より良い変化をもたらす力を青年に与えるために能動的な活動ができる機会を提供すること」です。つまり、意識改革を遂げさせるための能動的な機会を提供するのが青年会議所の使命ですが、会員拡大、すなわち青年会議所を知らない者にその魅力を伝え、その結果、入会候補者の意識を変革させることは、青年会議所の使命そのものであり、JC運動の根底を為すものです。そして、入会候補者の意識を変革させ、入会へとつなげるためには、メンバー一人ひとりがJC活動の中で得ることができた学びと成長、そしてその想いを入会候補者に伝えることが重要です。そして、新たな仲間の入会は、メンバーや組織に新しい発想や価値観、刺激をもたらし、組織の活性化につながっていると考えます。だからこそ会員拡大は青年会議所の重要な担いの一つであり、永続的に継続していかなければならない活動だと私は確信しています。

又、2020年、2021年と青年会議所の活動に制限がかかり、入会が浅いメンバーには活動を通じて得ることができる様々な学びが経験できずにいましたので、本年は青年会議所運動とは何かを学び、多くの気づきを得て行動と意識を変革させ、LOMや地域から必要とされる次代を担うJAYCEEとして成長することができるような研修を行い、函館青年会議所の先を見据えた人材育成に邁進していきます。

【結びに】

刻々と変化する時代の中で、変化を恐れることはすなわち停滞、さらには後退を招くと考えます。失敗を恐れて行動を起こさないよりも、行動を起こして上手くいかなくてもそこから学び、その経験を次に活かすことが大事なのです。JCでの経験はすべて自分自身の成長につながり、このまちを支えていくリーダーとしての力となるのです。失敗を恐れることなく、青年らしく積極的に行動し挑戦することで、多くのかけがえのない宝を手にすることができるとおもいます。

あなたが転んでしまったことに関心はない
そこから立ち上がることに関心があるのだ
~エイブラハム・リンカーン~

青年である私たちは、率先して地域の明るい未来を夢見てビジョンを描くこと、そしてその描いたビジョンを具現化し、多くの地域住民の皆様の共感を得ながら運動を進めることで「明るい豊かな社会の実現」という夢を成すべく、これからも精進してまいります。